昨年発売された携帯型分光放射計MS-730は、太陽光や各種光源の光の強度を波長毎に測定することができる携帯型の分光放射計です。計測感部となる軽量でコンパクトな本体と表示器としてのスマートフォンをWi-Fiで接続することができ、フィールド測定や遠隔操作による分光測定を可能にしました。スマートフォンアプリを利用することで、素早く手軽に計測データを確認することが可能なことから、様々な分野においてご利用頂いております。
例えば、農業における光環境評価では昨今、リモートセンシング技術を利用して様々な最先端の研究が試されています。上空からある特定の範囲を一度に計測し、耕地全体の様子を評価したり植生分布を観測する用途でドローンやUAVが利用され、こうした機器にMS-730を搭載して計測することが徐々に増えています。特にMS-730に標準搭載されているWi-Fi通信機能は、農地におけるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index, 正規化差植生指数)の観測・評価をより効率的に実施することができるため、大変重宝されています。このNDVIを計測することにより、植物からの蒸散・光合成速度の様子が分かる事から、作物の健康状態を評価する上で重要な指数となります。MS-730を利用することによって随時計測データをスマートフォン上で確認でき、連続的な計測においても測りたいタイミングで実施でき、使用性の大幅な向上につながっています。
この他、植物工場内で利用するためのLED灯の性能評価や病害虫を忌避するための電灯の開発、遮光カーテンの実環境下での評価など、農業用資材分野でもMS-730が利用されています。
また自動車分野では、自動車の安全運転技術に採用されているセンサーの評価にMS-730が利用されています。この安全運転技術に採用されているセンサーの中には可視光線~近赤外線域の波長帯を利用して、光学的に障害物を検知する機構が採用されており、MS-730はそのセンサーの感知エリアの評価や射出される放射強度について試験することができます。様々な場所に移動しながら計測できるため、試験評価の段階だけでなく実環境での評価も可能となり、その利便性について高い評価を得ています。さらにヘッドライトをはじめとした照明灯においては、光源の違いで放射強度がどのように変わるかの試験にも活用されています。さらには、自動運転技術や車内及び車外照明、表示器の見え方の評価など、様々な用途で活用される事が期待されています。
屋内・屋外を問わず、簡単に持ち運べるMS-730を利用することで、据置型ではできなかった移動観測やリモートセンシングをより効率的に実施できるようになりました。スマートフォンを利用することによってパソコンが無くてもすぐにデータの確認や共有が可能で、さらにカメラやGPS機能と連動できるのは、フィールド測定や遠隔操作による分光計測において大きな利点となっています。上記の農業や自動車分野の他にも材料評価や環境調査用途でも導入されており、今後より幅広い分野での利用が期待できます。
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