
2016年、当社英弘精機は従来の熱電堆式センサーの常識を超えた、新コンセプトの日射計MS-80シリーズを開発・発表しました。
再生可能エネルギー事業の拡大、特に、太陽光発電需要が急激に伸長する中で、太陽電池の発電燃料となる日射量測定は、発電所設置のためのリソースアセスメントや、設置後の発電効率モニタリングのための物差しとして、非常に重要な位置を占めています。
従来、日射計は黒色塗装の受感部を二重のガラスドームで保護するという設計が主流でしたが、高精度な日射量測定を必要とする市場ニーズに対応するためには、新たな技術ブレイクスルーが必要な状況となっていました。
そのような市場ニーズを踏まえ、英弘精機は、日射計の精度向上、長期信頼性、並びに生産性向上を実現するため、最新サーモパイル技術と拡散板の組合せを採用したMS‐80シリーズを開発しました。
MS-80シリーズは2016年の発売以来、2020年に産業向けの信号レパートリーや診断機能を付与したMS-80Sを、2022年にMS-80Sの機能に加えて霜・露によるエラーを軽減するためのヒーティング機能を持ち合わせたMS-80SHを次々とラインナップに追加し、2016年を皮切りに革新的な光学設計を持つMS-80シリーズ日射計の改良を加えながら、日射測定の精度・機能性・生産性向上を目指してきました。現在では太陽光発電、気象観測、自動車計測・建築等の幅広い分野で導入いただいております。
なお、拡散板とサーモパイルの組合せを採用した日射計は、EKOの独自技術であり、MS-80シリーズは以下の国で特許を取得しております。
日本特許:特許第6023942号・6792113号、審査中の欧州出願:15898333.8 、米国特許:US 9,909,919 B2、インド特許:432973、中国特許:ZL 2015 8 0082911.6
MS-80シリーズ特長
- 高速応答
従来製品に比べ、日射入力に対して約1/10の時間(0.5秒で95%応答)で反応できるようになりました。これにより、雲の通過などによる日射強度の急激な変化にも正確に追随し、捉えることが可能です。応答時間の短縮は、回転式シャドウバンド日射計測システム「MS-80SH Plus+」の開発にもつながりました。本ソリューションは、両面採光型太陽電池の裏面に入射する日射量モデル計算に必要な散乱日射や、直達日射・全天日射の日射三要素を、安価かつ高精度に測定可能です。
- 優れた長期安定性
日射計はその使用用途上、屋外で温度/湿度/紫外放射等の様々な環境要因によるストレスを受け、劣化してしまいます。この劣化により日射計の校正値(感度定数)が変わります。MS-80シリーズでは、光学設計の変更により、センサー部分が紫外放射や外部環境の影響を受けにくくなりました。これにより長期安定性を向上させることができ、0.5%/5年を実現することが出来ました。また加えて再校正推奨期間5年間(従来品2年)になり、再校正によるコストを抑えることが可能です。
- 低ゼロオフセットの実現
ゼロオフセットとは、日射の無い夜間時に本来であれば0となるべき出力が0とならない現象を言います。ドーム部分とセンサーの温度差によるものと、測器の温度変化に起因するものの2種類に分けられています。光を熱に変換してエネルギーを測定するサーモパイル型日射計では避けられないエラーですがMS-80シリーズは拡散板方式+新サーモパイルセンサー+ドーム小型化を行うことでゼロオフセットエラーを大幅に低減することに成功しました。(国際規格ISO9060:2018要求仕様ゼロオフセットC: ±10W/m2に対して、MS-80シリーズ: ±2W/m2)
- 傷や環境ダメージ耐性の向上
ガラスドームの小型化により、砂嵐等による発生するひっかき傷に対してのドームの耐久性が向上致しました。
- 優れた温度特性
内部の温度補償回路基板により、温度変化によるエラーを押さえ、幅広い温度環境下で高精度測定が可能です(-10~+40℃: ±0.5%, -20~+50℃: ±0.5%, -40 ~+70℃: ±2%(80SH))。
- 様々な信号出力
産業向けのデジタル/アナログ信号からシステム要件に合わせて信号出力を選択/設定変更可能です。
MS-80S: Modbus RTU, 4-20mA, 0-10mA(100Ωシャント抵抗で0-1Vに変換可能)
MS-80SH: Modbus RTU, SDI-12
- 内部センサー異常アラート機能によるO&Mコストの低減 (MS-80S, 80SH)
日射計内部の温度・湿度・傾斜センサーの値をモニタリングすることでいち早くセンサーの異常を検知することが可能です。また気密異常が発生した際の内部湿度アラート、ヒーター電流に異常があった際のアラートがあるため、オペレーターの習熟による判断差は生まれず異常を検知可能です。(Modbus RTU/SDI-12使用時。ヒーターアラートはMS-80SHのみ)
- ドームヒーティングによる霜・露の除去 (MS-80SH)(日本:特許第7160429号、欧州:EP 4300055、米国:US 11,821,786 B1、中国:ZL 2022 8 0004577.2)
ドーム表面上に発生する霜・露は朝方等の日射計測開始のタイミングで大きな測定誤差をもたらすものです。IEC61724-1:2021ではクラスAの太陽光発電システムで年間GHI時間の2%以上で霜又は露の影響が考えられる場合は、霜・露の影響緩和が求められます。結露・着霜を防ぐドームヒーティング機能を有するMS-80SHは最適な日射計となります。ヒーティング機能はシステム設計の必要性に応じてON/OFFをすることが可能です。