本ページでは、B型粘度計で実施できる試料の特徴を捉える測定方法を紹介します。
- フローカーブ測定
- TI値測定
- 降伏応力測定
- サンプルの入れ方で値が変わる
- 他の装置との測定値の互換性
試料の特徴を捉える測定方法
1. フローカーブ測定
速度を変更して粘度測定を行います。速度に対する粘度(またはせん断応力)をプロットしたグラフを、フローカーブと呼びます。
フローカーブは、その試料の流動特性を表すデータになり、様々な工程に対応する速度の粘度を見積もることができます。1点の粘度値では把握できないたれ性や塗布性などの幅広い工程に対する流動特性が評価できます。非ニュートン流体を評価・管理する上で重要な計測方法ですので、研究・開発のユーザー様にとって有効な手法です。
たれ性→遅い回転数
塗布性→早い回転数
2. TI値測定
2つの回転数の粘度値の比を求めます。1つ目の回転数に対し、2つ目は10倍の速度(例:1rpmと10rpm)を与えて計測します。
グラフの傾き、比率からたれ性、分散性を評価しており、フローカーブ測定ほどではありませんが、試料の非ニュートン性を評価する際に用いられる手法です。主にインク・塗料などの業界において、製造管理や品質管理の場面で使用されています。
3. 降伏応力測定
マヨネーズや生クリームなど、形を保つことができる半固体は、容器に圧力を加えることで流動させることができます。この静止状態から流動状態に至る際の応力を降伏応力と呼びます。
B型粘度計でもこの降伏応力を評価することができます。
羽根型ピンドルを試料に挿しこみ、1rpm以下程度の回転数を与えます。降伏応力以下ではスピンドルはほとんど動かず、粘度計内部のバネがひずむだけですが、バネの強度(トルク)と試料の降伏応力が釣り合うとバネに蓄積された力が開放されます。このポイントを降伏応力として捉えます。
降伏応力は、食品や化粧品であれば食感、感触に大きく変化をつけることができますし、粒子分散系では分散状態の維持に役立ちます。塗料では印刷特性、印刷後の 形成保持性に関わるパラメータとして扱われています。
4. サンプルの入れかたで値が変わる
→ ステップ測定機能
試料内部で分散粒子が内部構造を形成するような場合、その構造の大きさ、崩れやすさにより粘度が変化することがあります。また、一度壊れた構造が静置することにより再形成される場合もあり、これは『測定前に測定試料に対してどのようなせん断を加えたか』で測定値が変わる可能性が有ることを示しています。
このように粘度が時間に対して履歴をもつ現象を『チクソトロピー性』があると表現します。
さて、チクソトロピー性を持つ試料を測定する際には、測定する前の状況にも注意を払い、せん断の履歴を整える必要があります。
DV2T/DVNextモデルでは、回転数を段階的に変更する機能があります。この機能を使い、せん断履歴を整えてから測定を開始することができます。
設定例
(1) 10 rpm 5分 → (2) 0 rpm 10分 → (3) 測定開始
この時、(1)の回転数・時間で値が安定することを確認しましょう。(2)の静置時間を固定することで、構造回復の時間を固定することができます。このように、せん断の履歴を整えることで再現性の良い測定ができるようになります。
5. 他の装置との測定値の互換性
→ せん断速度
粘度を測定する上で必要になる物理量として、せん断速度(ずり速度)、せん断応力が 挙げられます。せん断速度は、流動場のすき間のパラメータを含む流動速度になります。せん断応力は、単位面積あたりの水平方向への応力です。
これらを求めるには測定に使用するスピンドル、カップなどの形状から算出する必要があります。
せん断速度を求めることができる測定系は、共軸2重円筒型、コーンプレート型( 平行平板型)の2種になります。共軸2重円筒型、コーンプレート型で測定した粘度値は、絶対値のような扱いができるため、どちらの測定系で測定した値でも互換性を持たせることができますし、せん断速度が同じであれば粘度値をそのまま比較することができます。
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