ウィンドファームの開発において、陸上、洋上問わず風況調査は開発過程において欠かせないタスクとなっています。
特に洋上の風況を測る事は陸上に比べ、難易度が高く、コストも非常にかかります。
洋上に風況マストを建設したり、浮体に鉛直風況観測ライダーを搭載し、洋上に係留したりなどと各種手法がありますが、これらの手法は洋上の風況観測点に直接展開できるメリットがある一方、不具合対応やメンテナンスを実施する際は機器の回収含めて洋上にアクセスする他ありません。洋上へのアクセスは天候や海象条件に左右され常にアクセス出来る訳ではなく、貴重な観測期間の欠測に繋がるリスクが想定されます。またデータ通信上のインフラ整備、電源の確保など様々な課題をクリアする必要性があります。
LEOSPHERE社製スキャニングライダー「WINDCUBE SCAN」はこの様な問題を解決する、洋上に機器を展開する事なく陸上から洋上沖合5~7km先の風況を観測出来きるソリューションです。
陸上にWINDCUBE SCANを設置するため、インフラ整備(データ通信、電源)も洋上に比べると難易度がぐっと下がります。またメンテナンスや不具合対応も天候や海象条件に左右される事はありません。欧州でもスキャニングライダーを利用した洋上風況観測の事例がありますが国内でも既にスキャニングライダーを利用した洋上風況調査がスタートしております。
特に風況調査において事業採算性だけではなく、ウィンドファーム認証にも関係してきます。
ウィンドファーム認証におけるライダー観測は乱流強度・シアの観測が課題と言われる中、スキャニングライダーを用いて乱流強度が観測できる期待も高まっています。コスト面においても、メンテナンス含めたトータル費用で考えますと安価なソリューションと言えます。
WINDCUBE SCANの特徴
1) 最大10km先の風速を測定可能
鉛直風況観測ライダーの比にならないレーザーパワーを有する事で観測条件の優れた天候であれば最大14kmまで観測値を得る事が可能です (400Sの場合) 。現在、着床式風車開発エリアとしてはおおよそ離岸距離7kmと言われておりますが、レーザーパワーを見ると十分な実力を備えているといえます。3-4kmの離岸距離では既にミドルレンジタイプの200Sを用いた長期観測も実施されており、おおよそ80%以上のデータ取得率であると言われています。このデータ取得率はフローティングライダーのKPIのベストプラクティス相当と言われており、十分な取得率であると言えます。
2) フレキシブルな観測モードに対応
スキャニングライダーWINDCUBE SCANはその名称のごとく、レーザー射出部を‘SCAN’しながら風速を観測します。水平方向に360°、仰角方向に-19°から199°まで稼働する事が出来き、FIXED、PPI、RHI、DBSの各スキャンシナリオの走査を実現しています。
3) 最大360点の観測ポイント
スキャニングライダーWINDCUBE SCANはレーザー照射方向で任意で設定した観測点毎のデータを得る事が出来ます。更に空間をスキャンする事でスキャンした方向にも観測データを得る事が出来ます。これにより最大360点のデータを1つのSCANで得る事を実現しています。
4) 風速精度
スキャニングライダーWINDCUBE SCANで観測される風速はレーザーを射出した方向の風速‘視線風速’を得る事が出来ます。この視線風速からスキャン方法に応じた各種手法で水平風速を算出します。この視線風速や各種手法で算出された水平風速の検証は国内外を問わず第三者機関含め検証されており、風速精度は0.2m/s以下の実力を有しています。
5) ポインティング精度
スキャニングライダーは陸上から洋上数km先の風況を観測する事が出来ますがレーザーを照射している高度、方位が観測したい所を捉えているかが観測キャンペーンを成功させるカギとなります。WINDCUBE SCANの仕様上の照射精度は±0.1°ですが、実力値としてはそれ以上です。
この照射位置を的確に把握する手法としてハードターゲット調整があります。
WINDCUBE SCANは4km先の風況マストも鮮明にとらえる事が出来、照射位置を仰角と方位で的確に把握かつとらえる事が可能です。
様々なアプリケーション
WINDCUBE SCANは国内外問わず幅広いお客様にご利用頂いています。
防災気象分野、ドローン航行時の風況監視、宇宙航空分野(ロケット・航空機の後方乱気流)など多岐にわたります。
洋上風況調査の分野では既にいくつかの事業でご利用頂いています。なかでも、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)殿の「着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業(洋上風況調査手法の確立)」1において、WINDCUBE SCANを利用した海上風観測の検証実験が青森県むつ小川原港で行われています。こちらのサイトは、上記のNEDO事業内において、リモートセンシング装置の検証サイトとして公開されているため2、洋上観測鉄塔をターゲットとして各社様のWINDCUBE SCANの事前検証が多数実施予定です。
EKO はLEOSPHERE社より同社の国内サポートセンターとして2019年に任命されました。同社ライダーの単なる機器御提供だけでなく、点検、メンテナンスなどハードウエアの面からお客様の貴重なデータと高精度な観測を維持できる様全身全霊でサポートしていきます。
本製品に関する詳細、ご質問は下記よりお問い合わせください。
製品ページ:
https://eko.co.jp/products/pv_windpower/wind_assessment/p1124-2.html
お問い合わせ:
環境機器事業部 info@eko.co.jp