乳飲料のような油滴が水に分散している希薄なエマルジョンでは、一般的には油滴の比重が水よりも低いため、時間経過により上層に油滴が集まる“クリーミング”が起こります。クリーミングが起こると、飲料中で油分の濃度勾配が生じるため、味や香りが製造時とは異なってしまったり見た目の悪さにつながったりしてしまうため、添加物や製造工程を工夫することでクリーミングが起こらないようにする・安定性を良くする必要があります。
静置安定性の評価方法
安定性の評価には、一般的には目視による評価が行われています。しかしながら、目視では人により変化が見える・見えないの判断が変わってきたり、そもそも変化が見えるまで時間がかかったりするため、評価に時間がかかってしまいます。 ST-1は近赤外光を用いて液体試料中の粒子濃度変化(=粒子の移動)や粒径の経時的な変化を捉える装置です。透明~半透明な試料は透過光強度で評価し、半透明~不透明な試料は後方散乱光強度の変化で評価します。人の目では判断できない微小な変化を捉えるため、目視よりもはるかに早く安定性を評価することができます。
ST-1を使用した安定性評価
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何が起こっているのか?
ST-1では、測定で得られたグラフの形状から、①粒子の沈降、②粒子の浮揚(クリーミング)、③粒径成長 を読み取ることができるため、定性的な評価を行うことができます。
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どれくらい起こっているのか?
また、得られたグラフを解析することで、変化率を求めることができます。解析には、ピーク面積、ピーク幅、光強度の平均値などが選択できます。沈降やクリーミングの評価にはピーク面積を、層分離する場合はピーク幅を、凝集などの粒径変化には平均値解析を行います。この変化率は沈降性などの指標として用いることができます。
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比較評価
解析により得られた変化率は、沈降性などの指標として用いることができます。この指標を用いて安定性の比較評価を行うことができます。