嚥下食とは
現在日本では65歳以上の高齢者が総人口に占める割合が上昇しており、今後も増加すると考えられています。高齢や病気により、噛む力や飲み込む力などの嚥下機能が低下すると、食事中にむせたり、のどに詰まらせて窒息や誤嚥性肺炎の原因となる危険性が出てきます。そこで、嚥下機能が低下した人でも安全に食べられるように、とろみをつけたり、ペーストやゼリー状にするなどの工夫を加えた食事を嚥下食といいます。
嚥下食と粘度測定
嚥下食に関連する規格は、消費者庁や農水省、業界団体が定めたものなど複数存在しています。多くは“食事”に関する規格のため、噛みやすさ、飲み込みやすさを物性値にて区分しています。その中で、飲料に関しては飲み込む際に肺への誤嚥を防ぐために“とろみ”をつけて提供することを推奨しています。この“とろみ”の基準を、回転粘度計を用いて測定した粘度値で設けています。
粘度値による基準が存在する規格
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特別用途食品 とろみ調整用食品
特別用途食品とは、乳児、幼児、妊産婦、病者などの発育、健康の保持・回復などに適するという特別の用途の食品に掲示することができる規格で、消費者庁が定めています。その中で、嚥下食については「えん下困難者用食品」と、「とろみ調整用食品」の2種類のカテゴリがありますが、粘度値がかかわる規格は「とろみ調整用食品」になります。「とろみ調整用食品」は、2018年4月1日に特別用途食品に追加されました。
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測定方法
測定方法は、「コーンプレート型粘度計」を用いて、50[1/s]にて粘度を計測します。 添加濃度0.1-1.5%で粘度100mPa・s、添加濃度1.5-4.0%で粘度400mPa・sであることがもとめられます。 2013年に「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会」がまとめた「嚥下調整食分類2013」にも、とろみ食の区分として3段階の粘度値が設定されています。(詳細は別ページ〇〇参照)
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評価装置
Ametek Brookfeild社製粘度計のラインナップで「とろみ調整食品」にかかる粘度を計測可能な粘度計は、コーンプレート型粘度計ですが、同社製RSTレオメータでも同様の計測を行うことができます。さらに、規格基準の測定条件では見えてこないレオロジー挙動を捉えることができるため、とろみ調整用食品の開発においては、非常に有効なツールとなります。